こんな暑い日に、生まれてきてくれた。
本当に雲がどこにも見当たらない。
今思えば朝からそんな兆しもあった。
それでも、もう少し時間かかるかなと撮影に出かけてしまった。
午後1時半ごろ撮影が終わるタイミングで陣痛が始まったかもと奥さんから連絡が入る。
暑い夏の日を川で過ごそうとしている人たちを追い抜き追い抜き、急いで帰る。
山が一年で一番賑やかな日に生まれてくるのかもと何となく考えながら二日前に動かなくなったダットサントラックのことも考えて、できる限りの安全運転
家に着いたのは午後2時半前
そこから陣痛の時間を図り1時間に8回の陣痛、助産師さんに家に向かってもらう。
陣痛が来るたびに手にすごい力の入る奥さん。
その痛みをこらえながら陣痛のすさまじい痛みを想像する。
一瞬、自分だけの時間があって本当にここで、この家で生まれてくるんだなと思った。
助産師さんが家に到着した安心感からか、そこからはうろ覚え。
生まれてきた瞬間の時計の写真がぼけていて、はじめてマニュアルのレンズを使っていることを後悔したこと、山暮らしでクーラーを意地でも入れずに過ごしていたせいで一番暑い日に生まれてきた赤ちゃんを冷やすためにキャベツの葉っぱを帽子のようにかぶせたのが可愛くてしょうがなかったこと、うれしくて眠れないから、この文だけは今日が終わる前に上げたくて、あと3分しかないこと
とにかく無事に生まれてきてくれてありがとう。
野沢裕