こちらの記事はnoteからの転載となります。
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うちのお店(さつま揚げ・蒲鉾専門店)に入って来た年配のお客様が、よく言う言葉がある。
「懐かしいねー!昔はよく結婚式にもらいよったぁ!で、この卵を兄弟で喧嘩して取りよったのよ!」
こんな感じの言葉。
たしかに私も昔は父が結婚式に出席した日のお土産(引き出物)は、折詰と赤飯だったなぁと思い出す。
昔は、お祝いと言えば蒲鉾の折詰というくらいよく使われていたようだ。義母達が言うには週末になると300個〜出ていたと。
今では多くても30個くらいの注文なのだが、先日ありがたいことに、230個の折詰の注文をいただいた。棟上げ(上棟式)の手土産に持たせるのだと言う。
鹿児島では棟上げの際に”餅まき”という風習がある。家主や施工した大工さん達が屋根の上からお餅やお菓子、お金を撒く。それを大人子ども関係なく我先に!と取っていく。
他県の友達に餅まきのことを話したら、「何それ!面白そう!」という反応だったので、鹿児島の風習なのかもしれない。棟上げは子どもの頃から大好きだった。
餅まきが終わると、その建設途中の家の中で宴会が始まる。その時のお土産の定番が蒲鉾の折詰。
今では棟上げも簡易化されているようで、コロナの影響もあり宴会までするところは少ないようだ。
少ない注文の中でも、大切な文化は繋げたいと思っているから、蒲鉾の折詰は無くさない。一つ一つ職人が思いを込めて書く「寿」の文字は心を打つものがある。
お祝い事でもらったあの日の蒲鉾折詰のことを、誰かまた自分のお祝い事の時に誰かに差し上げようと、蒲鉾折詰を思い出してくれたら嬉しい。
無くさないで、繋いでいきますからね。